超初級者のためのミステリ話

マニアではない初級者によるモノ

ハメチャンロスマクとハードボイルド・ワンダーランド

 ハメチャンロスマク。

 

 奇妙な呪文ではない。下品話をしようというわけでもない。

 

 ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルドについて述べたいだけだ。

 誰が言ったかこの言葉。

 ともかく、この3人はアメリカ・ハードボイルド小説の代表的な人たちである。

 

 1920年代の”ハードボイルド”は単に登場人物のタフでシニカルな態度を示すのに使われ、”ハードボイルド・フィクション”のようなジャンルの意味では用いられてなかった(用いられたのは戦後か?)。

 ハードボイルドは、アメリカの1930年代–50代が全盛期だと言われている(ただし、ロス・マクドルドは1960年代に代表作を残した)。

 

 前回の”黄金期”にハードボイルド作品を加えてみよう。

 

・1929年

『赤い収穫』Red Harvest (ハメット)

『デイン家の呪い』The Dain Curse(ハメット)

『僧正殺人事件』The Bishop Murder Case.(ヴァン)

『 ローマ帽子の謎 』The Roman Hat Mystery(クイン)

・1930

『マルタの鷹』The Maltese Falcon(ハメット)

『牧師館の殺人』The Murder at the Vicarage (アガサ)

  • 『カブト虫殺人事件』 The Scarab Murder Case.(ヴァン)
  • 『フランス白粉の謎』 The French Powder Mystery (クイン)
  •  『夜歩く』It Walks by Night (カー)

 ・1931年

『ガラスの鍵』The Glass Key(ハメット)

『ケンネル殺人事件』The Kennel Murder Case(ヴァン)

オランダ靴の謎』 The Dutch Shoe Mystery (クイン)

・1932年

ギリシア棺の謎』 The Greek Coffin Mystery(クイン)

エジプト十字架の謎』 The Egyptian Cross Mystery(クイン)

『Xの悲劇』The Tragedy of X(クイン)

『Yの悲劇』The Tragedy of Y(クイン)

・1933年

『闇の中から来た女』Woman in the Dark(ハメット)

  • アメリカ銃の謎』 The American Gun Mystery(クイン)
  • 『シャム双子の謎』The Siamese Twin Mystery(クイン)
  • 『Zの悲劇』The Tragedy of Z(クイン)
  •  『レーン最後の事件』 Drury Lane's Last Case(クイン)

・1934年

『影なき男』The Thin Man,(ハメット)

オリエント急行の殺人』 Murder on the Orient Express  (アガサ)

『チャイナ橙の謎』The Chinese Orange Mystery(クイン)

・1939年

『大いなる眠り』The Big Sleep (チャンドラー)

そして誰もいなくなった』And Then There Were None (アガサ)

 

 探偵小説の黄金期は、ハメットの全盛期であり、最後にチャンドラーが出てきた時期だった。

 

 生年&没年は、

レイモンド・ソーントン・チャンドラー(1888年7月ー1959)

S.S.ヴァン・ダイン1888年10月-1939)

アガサ・クリスティー (1890年–1976)

サミュエル・ダシール・ハメット(1894年-1961)

エラリー・クイーン (1905年-1971と1905年ー1982)

ジョン・ディクスン・カー1906年-1977)

ロス・マクドナルド(ケネス・ミラー 1915年-1983)

 

 最も若いロス・マクドナルドが生まれたのが1915年(大正4年)。

第一次世界大戦の2年目。日本が袁世凱政権に対華21ヶ条要求。芥川龍之介羅生門』の年だった。