超初級者のためのミステリ話

マニアではない初級者によるモノ

著名なハードボイルド小説家たち

 

パルプ・フィクション』は1994年のアメリカ映画(アカデミー脚本賞を授賞)。今回はパルプ・マガジン(Pulp magazines)で始まる。

 

  昔のハードボイルド小説家ーというと、”パルプ雑誌”(1950年代まで存在した紙質の良くない安価な雑誌)に小説や記事を書いて糊口を凌いでた人々という(勝手な)印象がある。

 実際に、ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルドもそうした雑誌に小説を書いた(アシモフやウールリッチ、クイーン、クリスティ、フィッツジェラルドも)。

 

 ロス・マクドナルド(1915-1983 Ross Macdonald)は、カリフォルニア州生まれのカナダのオンタリオ州育ち。4歳の時に父親が家族を突然捨てたために、母親とともに親類の所を転々とする。16歳で地元に戻って勉強し、ウェスタン・オンタリオ大学に進学する。卒業後は、高校に教師として数年間務めた。戦時中は海軍で通信将校として軍務に就いている。1946年には家族でサンタバーバラに引っ越す(1938年に結婚)。

 

 いわゆる”パルプ雑誌”で自分の作家キャリアを始めて、最初の4編の小説を本名(ケネス・ミラー Kenneth Millar)で発表している。

 ミラーはミシガン大学で学び、1952年に文学の博士号(PhD)を取得している。

 

 チャンドラーの未完の小説『プードル・スプリングス物語』(Poodle Springs)を1989年に”完成”させたロバート・B・パーカー(Robert Brown Parker 1932-2010)は、1971年にボストン大学マサチューセッツ州の私立大学)で英文学の博士号(PhD)を取得している。

 

 ハードボイルド作家、なぜかインテリである。

 

 レイモンド・チャンドラー(Raymond Chandler 1888ー1959)は、大学には進学してないが、ロンドン南部にあるパブリック・スクール(イギリスの私立有力校)で学んだ(後に公務員になったが、すぐに辞めた)。

 元々は、シカゴ生まれのアメリカ人だった。ネブラスカ州に移った後、レイモンドの少年期、アル中の土木技師だった父親は家族を捨てている。

 

 ハメット(Samuel Dashiell Hammett 1894-1961)はいわゆるインテリではない。

 10代の時に父親の健康悪化のために、学校を中退していくつかの職に就いた後、ピンカートン探偵社(Pinkerton National Detective Agency)で探偵(operative)として働くことになる(1915-1922)。そこで、ピンカートンがスト破りに果たした役割に幻滅したという。

 ハメットは、生涯の多くの時間を左翼活動家として過ごした。1930年代は反ファシストの立場をとり、1937年に共産党に参加している。1951年には、政府への情報提供を拒んだために、法廷侮辱罪で訴えられて有罪になり、服役している。

 

 ハメットは66歳の時に、ニューヨークのマンハッタンの病院で肺ガンのために亡くなった。

 ちなみに、チャンドラーは過度の飲酒の末に、70歳でカリフォルニア州サンディエゴの病院で亡くなった。ロス・マクドナルドことケネス・ミラーは、67歳の時にアルツハイマー病で亡くなった。

 

 人生いろいろ、晩年もいろいろである。