黄金期?
かつて黄金期があった。
といっても、佐渡の金山の話ではない。
東北の砂金話でもないし、1940年代後半のアメリカ合衆国西海岸のことでもない。
ましてやサッカーの若手世代のことでもないし、アニメの話でもない。
これはミステリについての話である。
だが、日本の「新本格派」についての話でもない。
英米などの1920-1930年代の探偵小説(特に本格推理小説)の黄金期のことだ。
Golden Age of Detective Fiction
その時期の多くがイギリス人で、
アントニー・バークリー(別名フランシス・アイルズ, 1893–1971), ニコラス・ブレイク (1904–1972)、 G. K.チェスタトン (1874–1936)、 アガサ・クリスティー (1890–1976), F. W.クロフツ (1879–1957), R.A.フリーマン (1862–1943)、 ロナルド・ノックス (1888–1957), フィリップ・マクドナルド(1900–1980), ドロシー・セイヤーズ (1893–1957), ジョセフィン・テイ (1896–1952)
などがいた(チェスタトンのブラウン神父ものは1910年代から書かれてる)。
もちろんアメリカ人もいて、
S. S.ヴァン・ダイン、 E.D.ビガーズ、ジョン・ディクスン・カー、エラリー・クイーン、 E. S.ガードナー、レックス・スタウトがおり、
それ以外に、レイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメットというハードボイルド小説の書き手もいた。
いわゆる”本格推理”小説に限定すれば、
アガサ・クリスティー (1890–1976)と
S. S.ヴァン・ダイン(1888-1939)、ジョン・ディクスン・カー(1906-1977)、エラリー・クイーン(1905-1971と1905-1982)に注目することになる。
主な作品を時系列で記すと、
『スタイルズ荘の怪事件』The Mysterious Affair at Styles (アガサ)
・1926年
『アクロイド殺し』The Murder of Roger Ackroyd (アガサ)
『ベンスン殺人事件』The Benson Murder Case (ヴァン)
・1927年
『カナリア殺人事件』The 'Canary' Murder Case(ヴァン)
・1928年
『グリーン家殺人事件』The Greene Murder Case (ヴァン)
・1929年
『僧正殺人事件』The Bishop Murder Case.(ヴァン)
『 ローマ帽子の謎 』The Roman Hat Mystery(クイン)
・1930年
『牧師館の殺人』The Murder at the Vicarage (アガサ)
- 『カブト虫殺人事件』 The Scarab Murder Case.(ヴァン)
- 『フランス白粉の謎』 The French Powder Mystery (クイン)
- 『夜歩く』It Walks by Night (カー)
・1931年
『ケンネル殺人事件』The Kennel Murder Case(ヴァン)
『オランダ靴の謎』 The Dutch Shoe Mystery (クイン)
・1932年
『ギリシア棺の謎』 The Greek Coffin Mystery(クイン)
『エジプト十字架の謎』 The Egyptian Cross Mystery(クイン)
『Xの悲劇』The Tragedy of X(クイン)
『Yの悲劇』The Tragedy of Y(クイン)
・1933年
- 『アメリカ銃の謎』 The American Gun Mystery(クイン)
- 『シャム双子の謎』The Siamese Twin Mystery(クイン)
- 『Zの悲劇』The Tragedy of Z(クイン)
- 『レーン最後の事件』 Drury Lane's Last Case(クイン)
・1934年
『オリエント急行の殺人』 Murder on the Orient Express (アガサ)
『チャイナ橙の謎』The Chinese Orange Mystery(クイン)
- 『黒死荘の殺人』The Plague Court Murders (カー)
- 『白い僧院の殺人』The White Priory Murders (カー)
・1935年
『スペイン岬の謎』The Spanish Cape Mystery(クイン)
- 『死時計』Death-Watch 『死時計』(カー)
- 『三つの棺』 The Three Coffins (カー)
- 『赤後家の殺人』The Red Widow Murders (カー)
・1936年
『ABC殺人事件』The A.B.C. Murders (アガサ)
『ひらいたトランプ』Cards on the Table(アガサ)
『途中の家』Halfway House(クイン)
- 『アラビアンナイトの殺人』The Arabian Nights Murder (カー)
・1937年
『ナイルに死す』Death on the Nile (アガサ)
- 『死者はよみがえる』To Wake the Dead (カー)
- 『火刑法廷』The Burning Court (カー)
・1938年
- 『曲がった蝶番』The Crooked Hinge (カー)
1939年
『そして誰もいなくなった』And Then There Were None (アガサ)
- 『読者よ欺かるるなかれ』The Reader Is Warned (カー)
上の
アガサ=アガサ・クリスティー、ヴァン=S. S.ヴァン・ダイン、
クイン=エラリー・クイーン、 カー=ジョン・ディクスン・カー
である。
1932年と1933年のエラリー・クイーンの仕事は人間業とは思えない。一人でやったこととは到底思えない(まあ実際、一人ではやっていないが)。